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本来の「干潟」の絶大な役割③~英虞湾編~

《一方で、三重県の真珠の養殖で有名な英虞湾では・・・》

以下、ジャパンフォーサスティナビリティ(JFS)(枝廣淳子)転写



江戸時代以降、湾・奥部の水田干拓により, 約70%以上の干潟が英虞湾から、姿を消したのです。
しかし、今となってみれば、干拓して田んぼにした場所も、その85%以上が使われず、休耕田や荒れ地になっています。

周辺域からの生活排水の流入や真珠養殖からの汚れの影響に加えて、干潟が減少していることから、干潟の持っていた海水浄化力や生き物を支える力が失われて赤潮や貧酸素が頻発し、特産品である真珠のアコヤガイをはじめ、二枚貝に被害が出る状況が続くなど、海域の汚染が大きな問題となってきました。

そこで、干潟の干拓地が使われなくなっているのなら、もう一度干潟に戻そう!!、それによって英虞湾をもう一度きれいな海に戻そう!!という取り組みが進められています。

この取り組みを進めているのは、三重県水産研究所です。

2006年から3年間、以前干潟だった場所に海の水を出し入れするという研究をおこなったところ、アサリなどの多くの生き物が戻ってきました。

この研究をもとにさらに一歩進め、干潟と海の間に堤防を造って干潟を仕切って水を干し、雨水や陸からの流水がたまってどぶ池のようになっていた場所で、いよいよ干潟再生の取り組みを始めました。

この場所は、堤防で海と仕切られていたため、陸地の栄養が海に流れ出ずに、堤防の内側の池側は過栄養状態である一方、外側の海のほうは貧栄養状態で、どちらも生き物の種類も個体数も少なく、荒れた状態でした。

この堤防は、伊勢湾台風やチリ地震などの時代に、当時は耕作していた農地を塩害から守るために県や国が防災としてコンクリート製の堤防を築いたものです。

この場所は、「一般海域」ということで所有者がいませんでした。そこで、関係者と話し合った結果、この場所でまず取り組みを始めることにしました。

英虞湾自然再生協議会が立ち上がり、漁業関係者、観光業者、自治体などで話し合いを進めています。

この堤防は、昭和35年ごろに造られたので、50年間、海水の行き来がなく、50年分の陸地からの有機物がたまっていた状態でした。

海水によって、50年分たまっていた有機物が少しずつ分解され、再生が進んでいくとの期待を背に、2010年の4月、堤防のフラップを開けて、海水が出入りできるようにしました。


Copyright 三重県水産研究所

海の水を導入する前は、極めて状態の悪い淡水の池で、ユスリカのような生き物しかいませんでした。

生物の種類を数えたところ6種類だったそうです。しかし、海水を導入して3カ月後の6月に調査をしたところ、生き物の種類は14種類に増えていました。たった3カ月でも、干潟は再生し始めているのです。

干潟はどのように再生していくのでしょうか? まず"日和見種"といわれるゴカイや小さな貝など、ライフサイクルの短いものがどっと増えます。そののち1、2年たつと、それらを餌とする食物連鎖の上位の生物が現われます。これらの生物は寿命も長く、大型のものです。そして3年ぐらいすると安定して、元の干潟のような状況になると考えられています。


Copyright 三重県水産研究所

干潟再生に取り組んでいるこの場所は、広さ約2ヘクタール。ここにたまっている水の7~8割が毎日入れ替わるくらいの交換率で、海水を導入しています。堤防の中央にある約1.8×2メートルのフラップを上げただけで、2ヘクタールの隅々まで海水が行き渡るというのは驚きです。次回の調査では生き物の種類はどのくらいに増えているでしょうか? この干潟の再生がとても楽しみです。

英虞湾には、この場所のようにかつて干拓され、現在は使われなくなった"元干潟"が500ヶ所、合計185ヘクタールもあるといいます。三重県農水商工部では、このすべてを調査し、所有者、面積、利用状況などをデータベース化しました。このデータベースを用いて、今後干潟に戻す取り組みを進められそうな所を特定することができます。

干潟再生を進める上での課題は何でしょうか? 

いちばんのハードルは所有者の理解を得ることだそうです。今回再生に取り組んでいる場所は、たまたま所有者のいない土地でしたが、ほとんどの"元干潟"の土地は、個人や企業が所有しています。その土地の再生が可能であること、そしてそれが自分にとってメリットがあることを、どのようにわかってもらえるか――その理解を得ることがこれからの大きな課題です。

また、地元の志摩市はこの取り組みを推進していますが、今後は堤防管理者である三重県や堤防などの管理を三重県に委託している国(農水省)などとの連係や協働も大事になってくるでしょう。この干潟と海の間の堤防に立って周りを見回すと、海と山と田んぼの広がる素敵な景色なのですが、堤防で仕切られた海側は国交省が管轄し、この場所自体は国立公園であるため環境省が、そして堤防自体は農業事業の一環として農水省が管轄するといった具合に、縦割り行政の壁が立ちはだかっています。

現在この場所では、地元の人々の理解と関与を求めて、月1回ほど観察会を行ったり、海藻をみんなで植えたりなどの活動を地元の人々や学校と続けています。この場所にアサリをまき、そのうち潮干狩りをしたいという計画もあるそうです。


日本には、人工干潟を造るという取り組みはありますが、元干潟だった所を干潟に戻すという取り組みはあまりありません。

数値モデルによるシミュレーション計算によると、現在の84ヘクタールの干潟に加えて、元干潟だった部分をすべて再生し、干潟の面積を266ヘクタールに増やせば、有機物の除去能力は年16トンから年126トンへと大きく増え、赤潮の発生や貧酸素化を大きく抑制することができます。

県水産研究所や行政、市民やNGOの取り組みに加えて、企業のCSR活動、真珠に対する環境ラベルの設定等を通じて消費者の意識も高め、干潟を再生することできれいな英虞湾を取り戻すことが、下降の一途をたどっている三重県の特産品である真珠の生産・販売量の回復にもつながる取り組みに広がっていくことを強く期待し、英虞湾の干潟再生の成果と他の場所への広がりを見守っていきたいと思います。



ジャパンフォーサスティナビリティ(JFS)(枝廣淳子)




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